総評|清水哲朗
約10年ぶりの審査でしたが、ネイチャー、自由両部門ともに全国レベルのコンテストでも上位に入りそうな傑作が多数寄せられているのは以前と変わらず。さすがは新潟県を代表するフォトコンテストだと改めて感心した次第です。またすべてがクリスタルプリントによるハイクオリティの画質で応募されるため、選者としては「用紙選びが」とか「印刷クオリティが」など余計なことを考えずに作品同士を見比べる厳正な審査が行えました。
両部門ともに上位入賞した人はいずれも光を捉えるのが上手な作者でした。写真は「光と影」の芸術と言われますが、デジタルカメラが主流になってもそれは変わらず。サイド光・斜光・逆光で捉えれば陰影で被写体を立体的な表現ができたり、透過光で被写体の透明感や瑞々しさを描いたりすることもできます。順光だと被写体の色を見せるには効果的ですが、平面的に写るためコンテストにおけるインパクトは弱めになります。本コンテストの応募者は上級者が多く釈迦に説法だと思いますが、残念な結果になってしまった初級中級者は今後の撮影現場で光をさらに言えばシャッタータイミング含めて意識してみてください。また定番のポイントや被写体での定番アプローチは作品の完成度は高くても「刷り直し」感が強く、これまでのイメージを超えないと選出されにくいのがコンテストです。デジタル技術の進歩によりフィルムカメラ時代では撮るのが困難だった世界が簡単にイメージ通りに撮れるようになりましたので、自分らしい視点、自分らしいアプローチで魅せる工夫をしてみてください。ちょっと残念だったのは、オーロラや彗星など話題の被写体を取り入れた作品応募がなかったこと。毎年開かれるコンテストではその年を代表するイメージは評価される可能性大です。入賞の約束はできませんが、今後意識していただければ幸いです。
学生部門は内容やアプローチに表現の可能性を感じました。これまでの常識にとらわれず自由に写真と向き合ってください。審査後に知りましたが、金賞の若山さんは3連覇とのこと。審査員が変わっても魅力あふれる作品は通じるものですね。今後も是非その才能を活かし、写真を続けていただければ幸いです。
グランプリ
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グランプリ 撮影者 本間トモ子 題名 「なかよし」 選評 二人とも良い表情をしていますね。「好き」の感情が行動に表れるくらいに仲が良いのでしょう。よく見ると赤い服を着た右側の子が首と頬を動けないように両手でホールドし、中央の子が抵抗している表情に見えなくもないところがこの作品の面白いところ。ちょっと前の世の中では考えられなかった濃厚接触シーンですが、見る側に抵抗感なく受け入れられるようになったことに時の流れを感じます。子供たちの自然な振る舞いは永遠に魅力です。
準グランプリ
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準グランプリ 撮影者 涌井忠司 題名 「朝霧」 選評 言葉も出ないほどの絶景。一瞬にしてこの世界に引き込まれます。この光景と出合うために連日通ったのか、運良くめぐり合ったのか、それとも天気予報や過去の経験、知識を活かして予測して出かけたのか。答えを作品から読み取ることはできませんが、出かけた甲斐があったのは間違いありません。実際に目の前にした時、作者は何を思ったのでしょう。何枚くらいシャッターを切ったのでしょう。同じ撮り手として称賛に値する名作の誕生です。
ネイチャー部門 金賞
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ネイチャー部門 金賞 撮影者 田澤直美 題名 「寂光」 選評 イタドリの実と葉でしょうか。光の捉えかた、撮影時間帯、切り取りと確かな目で被写体を表現しています。空間を生かした画面構成が素晴らしく赤い葉への視点誘導も見事でした。 -
ネイチャー部門 金賞 撮影者 若林茂敬 題名 「眼力」 選評 キャッチライトの効果もあり、タイトル通りの強さが伝わってきました。身近な鳥とはいえ、理想的な光で羽、表情、構図とポートレート的に捉えるのは容易ではありません。
ネイチャー部門 銀賞
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ネイチャー部門 銀賞 撮影者 小林公一 題名 「海鳴り」 選評 波の描写に加え、人工光も取り込んだことが幸いし、目の前で見ているかのような臨場感があります。明るすぎず暗すぎずの撮影時間帯選びも素晴らしく、波音まで聞こえそうです。 -
ネイチャー部門 銀賞 撮影者 塚原幸子 題名 「レースのドレス」 選評 コロンブスの卵ではありませんが想像力巧みに独自の世界や物語を描ける人でないと撮れないイメージ。その世界に没入中は魔法をかけられたような至福の時を送ったのでしょう。 -
ネイチャー部門 銀賞 撮影者 土屋芳孝 題名 「母子」 選評 猿の作品は数多く見てきましたが、これまでの残像を超えるイメージに釘付けとなりました。回りくどいことをせずに親子愛をストレートに描いた表現が心に刺さりました。
ネイチャー部門 銅賞
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ネイチャー部門 銅賞 撮影者 青木茂男 題名 「群舞」 選評 絶好のコンディションで撮影したことで星もホタルも美しい光跡に。ホタルの動きは運任せの面がありますが、北極星の位置を意識した画面構成に作者のこだわりを感じました。 -
ネイチャー部門 銅賞 撮影者 石黒敏正 題名 「輪廻」 選評 モズの早贄。クローズアップで写すとさすがにインパクトがあります。保存食や繁殖期に歌の質を高める栄養補給目的のようですが、被写体への興味関心と観察力が実を結びました。 -
ネイチャー部門 銅賞 撮影者 金子範夫 題名 「嵐のあと」 選評 立派な木の幹折れは胸が痛みます。たわわに実がなっているのも悲しいです。東日本大震災後の被災地で折れた桜が花を咲かせていましたが、懸命に生きる姿には勇気をもらいます。 -
ネイチャー部門 銅賞 撮影者 小杉昌三 題名 「飛び回る」 選評 正面飛翔は技術的なハードルが上がるため、鳥写真の中でも応募は少なめです。作者は正面飛翔に加え、柿ともう1羽を取り入れて生息環境まで表現したのは見事でした。 -
ネイチャー部門 銅賞 撮影者 坂井征栄一 題名 「涛乱」 選評 光もシャッタータイミングも完璧に荒波を力強く余韻たっぷりに捉えています。うねる波を模した刃文を意味するタイトルも作品イメージを引き締め、効果的でした。 -
ネイチャー部門 銅賞 撮影者 村山勇 題名 「晩秋素描」 選評 晩秋のカバノキ科の樹皮は遠くからでもよく目立ちます。山腹の切り取りだけだと平面的でしたが、地表の紅葉する木も入れたことで画面が安定。広がりに高さも表現できました。 -
ネイチャー部門 銅賞 撮影者 山下勝宏 題名 「流雲輝く」 選評 一生に一度は見たいと言われる滝雲。人々を魅了する自然現象ですが、遭遇確率は低いだけに作者も苦労したことでしょう。朝日の差し込み具合も印象的で迫力が伝わってきます。
ネイチャー部門 入選
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ネイチャー部門 入選 撮影者 有井寿美男 題名 「活動開始」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 江部堅市 題名 「朝露まとって」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 岡利昭 題名 「湖面の日の出」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 風間基和 題名 「捕食」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 鬼頭美保子 題名 「岩場に咲く」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 熊倉秀達 題名 「天の川」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 駒形洋子 題名 「小宇宙誕生」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 斎藤日出子 題名 「仲間入り」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 茂野孝志 題名 「生命」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 鈴木琉美子 題名 「凛として」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 林良一 題名 「路」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 古沢大輔 題名 「薄明の時」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 本多徹 題名 「秋の終りに」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 宮澤健二 題名 「アオサギ襲うハヤブサ」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 山川直衛 題名 「煌めく地塘」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 山口光子 題名 「水流響く」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 山口ようこ 題名 「夢心」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 山田守 題名 「早春の息吹」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 和田亨 題名 「みぞれ模様」 選評 -
ネイチャー部門 入選 撮影者 渡辺久子 題名 「初夏に入る」 選評
自由部門 金賞
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自由部門 金賞 撮影者 片山友幸 題名 「工具部屋の朝」 選評 この空間に幸せを感じる人は多そうです。道具が好き、作るのが好き、まつわることは何でも好き。好きなものを撮るのは写真の原点。いかに格好良く撮るかにも良い影響を与えます。 -
自由部門 金賞 撮影者 松林宏 題名 「おごそかに」 選評 巫女による神楽の奉納でしょうか。一条の光が巫女を浮かび上げたことで作品により緊張感が生まれました。物音ひとつ立てられない中でシャッターを切るのは勇気がいります。
自由部門 銀賞
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自由部門 銀賞 撮影者 江部勇 題名 「Uターン」 選評 この先に道がないことを物語る雪上のタイヤ痕。カラーでも色のない景色でしたが、コントラスト高めのモノクロ化が功を奏し、雪、タイヤ痕、空と印象的な描写になりました。 -
自由部門 銀賞 撮影者 茂野誠一郎 題名 「夜空に咲く花」 選評 そもそもが美しい花火に何を組み合わせるかでこうも印象が変わるのかという作品。同じことを考えていた人も手前に入れていますが、違和感なく溶け込ませたのが巧みでした。 -
自由部門 銀賞 撮影者 菅原聖哉 題名 「紅」 選評 「紅をさす」のは特別なこと、と思えばより感情移入して作品を見られます。作者は現場の凛とした空気を大事に少女から大人へ変化する瞬間を望遠でそっと印象的に捉えました。
自由部門 銅賞
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自由部門 銅賞 撮影者 小澤巸邦 題名 「ぼくたちもお花見」 選評 各地で見られるようになった光景は時代の記録でもあります。服や犬種は同じでもスタイリングと顔つきで個性がでますね。皆、ご主人のいる方向を見ているのが微笑ましいです。 -
自由部門 銅賞 撮影者 熊木理 題名 「選別」 選評 視点に唸りました。人物を中心に作業風景を撮りそうな現場ですが、機械と人で選別をし、枝豆が流れていく様子を俯瞰で撮るとは。まさかが与えるインパクトは目から鱗でした。
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自由部門 銅賞 撮影者 小林まき子 題名 「暑いよう!!」 選評 誰かがスピーチでもしていたのでしょう。聞き入る大人たちと我関せずアイスを美味しそうに搾り出す男の子。まさに観察力の賜物で、見逃さずモノにした作者を褒めたいです。 -
自由部門 銅賞 撮影者 近藤早苗 題名 「虹を越えて」 選評 黒煙を吐きながら田園を走るSL。絶妙のタイミングで撮影していますが、右奥の虹に気づくと広がる青空が奇跡的なようにも思え、作者の撮れた喜びが伝わってきます。 -
自由部門 銅賞 撮影者 二瓶純緒 題名 「人生、歌がある」 選評 歌い手の声が聞こえてきそうです。表情が豊かだったこともありますが、見えないものを写すのは容易ではありません。撮影技術に加え、被写体への思いと観察力の賜物でしょう。 -
自由部門 銅賞 撮影者 細川敏祐貴 題名 「相棒」 選評 ジワジワと込み上げてくる面白さ。置き物のような文鳥と人物の表情、カウンターキッチンの雑然さが、このお宅の日常を巧みに描いています。何度も見たくなる中毒性があります。 -
自由部門 銅賞 撮影者 山本勝栄 題名 「待つ」 選評 農村部の季節の狭間の光景を絶妙な距離と無駄のない構図で印象的に表現しています。タイトル「春を……」としなかったところに写真を読ませようとする作者の下心を感じました。
自由部門 入選
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自由部門 入選 撮影者 上野正道 題名 「天空のプランコ」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 太田裕一 題名 「桜颪」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 小柳裕子 題名 「進入禁止」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 金子克巳 題名 「勇往邁進」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 神田明彦 題名 「五十年の味」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 小池郁夫 題名 「三面川のいぐり網漁」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 崎濱秀夫 題名 「創造力!」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 鈴木勝年 題名 「元気溌剌」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 竹内治 題名 「羽ばたき」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 竹田捷幸 題名 「光る雪道」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 富樫幸治 題名 「霧幻峡」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 行方ひで子 題名 「休日の仲間」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 穂苅環 題名 「お散歩」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 星野康明 題名 「Touch !」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 松本圭司 題名 「ランタンの如し」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 山中巌 題名 「花火の光に照らされて」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 吉川一直 題名 「ビリーを聞かせて」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 吉澤園恵 題名 「街角ミュージシャン」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 渡辺真一 題名 「夕暮れ時」 選評 -
自由部門 入選 撮影者 和田均 題名 「朝採りの跡」 選評
学生部門 金賞
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学生部門 金賞 撮影者 若山美優 題名 「私がやりました」 選評 怒られた後でしょうか。気まずい空気が臨場感たっぷりに伝わってきます。当の本人はうっすらと目に涙がたまっているようにも見えますが「悪くないもん。謝らないもん」という気の強さも垣間見られます。うまく言葉にできず行動に出てしまうのは幼少期あるあるですが、まぁ随分派手にやらかしましたね。左端のお姉ちゃんを見切れるように入れた構図もリアリティがあり絶妙でした。時が経つごとに思い出話に花が咲く「若山家の名作」でしょう。
学生部門 銀賞
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学生部門 銀賞 撮影者 阿部悠史 題名 「水面」 選評 漠然としか思い出せない記憶や光景のようなアウトフォーカス作品。はっきりと写せばそれとわかるものをそうしないから意味があり、表現となり、見る側の想像力を高めます。 -
学生部門 銀賞 撮影者 保坂龍我 題名 「きんぎょばあちゃん」 選評 タイトルの意味は「金魚を飼う」か「近所の」なのかは不明ですが、いつもひょっこりと顔を出し、会話をする方なのでしょう。カメラを向けても気取らない姿が素敵です。
学生部門 銅賞
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学生部門 銅賞 撮影者 小栁七海 題名 「そろそろかな」 選評 待ちきれないのか。それとも究極の旨い焼き加減を知る達人なのか。タイトルを読んでも表情を見てもどちらにも取れます。あれこれ想像していたら、お腹が空いてきました。 -
学生部門 銅賞 撮影者 河井洸大郎 題名 「魅惚れる」 選評 空のグラデーションにシルエット描写は被写体をカッコ良く写す鉄板の組み合わせ。視線方向に空間を取ったことで余韻も広がり、被写体の魅力をより伝えています。 -
学生部門 銅賞 撮影者 玉木凰晟 題名 「走れ1・2・4」 選評 リレーは名場面の連続。3人が横並びで疾走している姿はまさに緊迫の場面です。そんな彼らの努力も関係なく番号読みでタイトルにする作者。面白いですね。「3」はどこかな? -
学生部門 銅賞 撮影者 戸枝栞音 題名 「遠回り」 選評 夕陽が綺麗だったのは確かですが、写っている内容にはそれほど意味はなく「普段と違うことをしたら世界が違って見えた」が本作の狙い。タイトルとの合わせ技が功を奏しました。 -
学生部門 銅賞 撮影者 冨樫ねね 題名 「お〜い、心暖」 選評 また覗きで呼びかけに応える姿が可愛らしいですね。「普通に振り返れば」と思うのは大人のつまらなさ。大人になるほど失っていく自由さを子どもたちは自然体で表現しています。
学生部門 入選
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学生部門 入選 撮影者 石山翔愛 題名 「ニコッ」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 神田大地 題名 「私は歌う」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 小林結芽 題名 「ずっと一緒」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 鈴木えみ 題名 「君が作り出す太陽は」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 鈴木莉緒 題名 「暖かい陽」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 中川琉奈 題名 「落陽」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 中原茉優 題名 「とんぼ」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 梨本恵未莉 題名 「三斜線」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 二宮啓輔 題名 「秋のはじめ」 選評 -
学生部門 入選 撮影者 藤塚かりん 題名 「水平飛行」 選評