第10回となる歴史を重ねてきた新潟フジカラーフォトコンテスト。その栄えある第10回を審査させて頂き、とても光栄です。
新潟フジカラーフォトコンテストが回を重ねるごとにその実力が向上してきたことがわかります。それというのも、応募された作品は上質なものばかりでした。
新潟という地域のコンテストという概念が見事に砕けたのです。応募されている方たちは、切磋琢磨し、 励まし合い、もしくは孤独に撮影し、応募する楽しみを知っていました。その写真愛好家のみなさんの実力で、辿り着いた第10回なのだと思います。
第一回の10年前は、フィルム写真は空前の灯火になり、主流はデジタルに明確に切り替わった頃です。身につける技術も持つカメラも時代とともに激変しました。
その頃に立ち上げたコンテスト、主催する側も応募するみなさんも志しが高くなければこの水準に達しません。第10回はその志しが脈々と続いている結果なのだと思います。
さて、どの審査も早く終わるわたしですが、今回に限っては、用意された時間をオーバーしてしまいました。予想を上回る作品を楽しく審査したのですが、どの作品を落とすのも惜しくて時間がかかってしまいました。審査前は、新潟という風土を感じさせるお祭りや雪景色、田んぼなどの作品が多いと予想していました。ですが、その様子は少し違っています。上級者が多いのでしょう。
風土を伝えるという外側の撮り方ではなく、自分が面白いと思った画角を探し、ストレートに入り込んで撮られた作品が多くありました。そして、さりげなく写真のエッセンスとして風土を取り入れるセンスの良さも感じられました。全体を通して、日常の風景の中にも特別を見出すハイセンスな感覚があり、脱帽します。
こうして、入賞作品を眺めると、作品の完成度の高さにため息が出ます。どの写真も傲慢さを感じない「力強さ」という共通の美徳があります。そして、カラー写真の色味に関して言えば、 要は彩度です。その彩度の演出が的確な美しい作品が多くありました。
第10回新潟フジカラーフォトコンテストの素晴らしい作品に出会えたことに感謝します。どうぞ、これからも自分にしか表現できない写真を撮り続けて下さい。
写真家 安珠
金賞
撮影者: 柏 行雄 新潟市中央区
題名 : クライマックス
講評 : 花火ではなく、花火師たちの仕事姿を撮影されました。こんなにも火柱の中に大勢でいるのですね。緊張感あふれる様子に引き込まれます。火柱の切り取り方やヘルメットの黄色と落ちる花火の色が溶け合っているのも美しく、作業風景を超えて花火を尊く表現しています。
金賞
撮影者: 寺澤 達夫 見附市
題名 : 稚児想う
講評 : なんとも言えぬ少年の黒目がちな瞳や口元の表情。それを活かすレンズや露出を駆使し、背景がきれいにボケています。そのボケた背景に同じ衣装の少年がこちらと向き合って構図を確かなものにしています。逆光で撮ったことで、全体の色合いを優しくしています。
金賞
撮影者: 根布 和之 新潟市西蒲区
題名 : 激闘
講評 : シンメトリーに構図を狙って撮りました。見事に牛たちの真剣勝負、二匹が同等の力であることが表現されています。まさに「互角」という言葉そのものです。中央の男子はいらないように思えますが、そこにいることによって、単調にならず、迫力になっています。
銀賞
撮影者: 今井 兼男 五泉市
題名 : ぶどうがり
講評 : 子どもらしく、動きのあるポーズと無邪気な表情が可愛いです。どこにいてなにをしているのか、背景から伝わります。状況説明にならないぶどうの入れ方が、にくいですね。
銀賞
撮影者: 小柳 直人 三条市
題名 : 生きる
講評 : 一生懸命に生きてきた人の笑顔は力強く美しい。土がついた指もこの写真の魅力で、見る人を愛おしくさせます。瞳の中に小柳さんが写っていて、笑顔が撮れた喜びが伝わります。
銀賞
撮影者: 金子 大一 佐渡市
題名 : 家並み
講評 : デザインされた建築物という訳ではありませんが、日本の丁寧な暮らしぶりが、美を生み出しています。そこに焦点を当てた視線が素晴らしいですね。色合いも単色で正解です。
銅賞
撮影者: 上野 正道 新潟市中央区
題名 : 好奇心
講評 : スクープ写真!猿まで携帯電話を持つようになったらこの世はどうなるのでしょう。そんなことを思わせる面白い写真が撮れました。居合わせた幸運だけでなく、構図も良いですね。
銅賞
撮影者: 金勝 哲夫 新潟市西区
題名 : 晩秋
講評 : 日差しとコスモスの華やかさが印象的ですが、次第に茶色い葉や茎と杖をつく老人が気になります。晩秋を賑わせるのも束の間。終わりある人生を楽しみたいと思わせます。
銅賞
撮影者: 栗山 浩三 三条市
題名 : オテンバさん
講評 : 春を満喫していて、かわいいですね。光と桜のボリュームが少女の顔の辺りにあるので、それを強調するためにも地平線が右下がりで正解です。動きも出て、おてんば度もアップ!
銅賞
撮影者: 近藤 武夫 新潟市中央区
題名 : 水掛け祭り
講評 : 水を浴び神輿を担ぐ男衆の気合、極限の表情に見入ってしまいます。降り注ぐ水のラインを出したことによって、より迫真の状況下でのお祭りだと伝わってきますね。
銅賞
撮影者: 坂井 政弘 新潟市西区
題名 : 鬼も観賞
講評 : 見ている鬼のポーズが面白いですね。みんなは真剣に見ているのに赤鬼はなぜか上から目線のポーズ (笑)。背景を人だけにしているのもシンプルですが高度な構図の技です。
銅賞
撮影者: 渋木 高志 三条市
題名 : 出番を待つ
講評 : 衣装をまとい、特別な役をもらっていても、子どもは子ども。待ち時間の無邪気な様子は演出以上に良いものです。窓から覗いた構図やふたりの表情の違いはどれも良い要素です。
銅賞
撮影者: 外石 富男 加茂市
題名 : 参道のひととき
講評 : お地蔵さまの見守る場所で、托鉢のお坊さんにおばあさんたちは、腰を低くし、手を前で組んで、笑顔でお話しをしています。 日本はまだまだ素晴らしいと思わせる一枚です。
銅賞
撮影者: 宮路 勝 見附市
題名 : 好奇心
講評 : 寒い雪の中もなんのその。明かりを覗く子どもたち。その明かりを受けたちょっと硬い表情は愛嬌として(笑)、闇に広がる明かりは絶景です。表情次第で金賞は確実でしたね。
銅賞
撮影者: 山内 由美子 魚沼市
題名 : 豊作の祈り
講評 : 幻想的という言葉で終わらず、ドンという花火の音、火薬の匂いまで感じるのは、村を見下ろす絶好の撮影場所だからこそ。花火の明かりで浮かび上がる村の姿が素晴らしい。
金賞
撮影者: 斎藤 京子 福島県白河市
題名 : 優美
講評 : 紅葉の美しさもさることながら、気温まで感じる描写。寒さが増すと紅葉の赤さも増すといいますが、冬を感じ始める深い秋。ボケ具合も幻想的です。左下の常緑樹の葉は違和感になりそうですが、それぞれが違っての自然。そこにまた四季の面白さを感じました。
金賞
撮影者: 中澤 敏男 新潟市西蒲区
題名 : 雨あがり
講評 : よくある手法といえばそうなのですが、完成度の高い美しさです。この小さな世界に美というものが凝縮されています。落ちてもなお生命を感じさせる花びら。それを浮かべる澄んだ水は光を映しています。シャープなピントと強い彩度がこの世界を作り出しました。
金賞
撮影者: 早川 恭弘 三条市
題名 : 妖艶
講評 : 吸い込まれる朱色の鮮やかさ。羽が空気を含みフワっとした感触も伝わる描写にうっとりします。光によって、朱色のグラデーションに影が出て、二色しかない写真をグラマラスにしています。フラミンゴの視線があることによって、見ていると別世界に誘われます。
銀賞
撮影者: 伊藤 博 胎内市
題名 : 浅春
講評 : 水彩画のような透明感。まだ冬の気配の中、新緑を見つけた喜びを感じます。水面に反射した空の水色が、より空気の冷たさを感じさせ、それと同時に新緑の芽生えを引き立てます。
銀賞
撮影者: 栗林 栄市 長岡市
題名 : カエルのメイク
講評 : 雌しべに乗れる本当に小さなカエルですね。花粉が顔についても不快に思わないのは、配色の完璧な美しさです。真紅の花と真緑のカエルとが相まって特別な世界感です。
銀賞
撮影者: 佐々木 壽英 新潟市西区
題名 : フィナーレの輝き
講評 : 岩の上を這う根に絡まる葉と実。枯れゆく様の最後の輝きを発見した佐々木さん。どんな場所にも被写体は存在し、それを発見出来るか輝きを与えられるかは撮り手次第なのです。
銅賞
撮影者: 安部 諭 新潟市東区
題名 : 妖艶
講評 : 彼岸花は密集して咲きます。なので、一輪の花以外をぼかして背景にすれば赤い美しい写真になります。一輪の花と赤色を強調するために四隅を暗くし、妖艶さを引き出しています。
銅賞
撮影者: 小関 淳司 新潟市西区
題名 : 早朝の輝き
講評 : 直線の木々の枝、丸く光る水滴、蜘蛛の巣はドレスのように広がって、まるで宴のようです。偶然の一瞬の共演を見逃さず、美しく切り取りました。露出を絞り、幻想的に見えます。
銅賞
撮影者: 小林 輝夫 阿賀野市
題名 : 凛として
講評 : 子どもを守る親鳥は凛としていますね。小林さんの感動を分けて貰えた素晴らしい写真です。、巣にさす光も活きていて、子どもの柔らかな羽根に一層可愛らしさを感じさせます。
銅賞
撮影者: 小湊 正光 燕市
題名 : 氷点下
講評 : 氷点下を表現するだけあって、大胆に加工しましたね。ですが、それが功を奏してスケールを大きく見せ、雄大な気持ちにさせます。自分のイメージがないとできない作業です。
銅賞
撮影者: 斎藤 日出子 佐渡市
題名 : 夕照
講評 : ひまわりというと、明るく元気なイメージばかりですが、夕景の光に照らされるひまわりの切なさに独特な魅力を感じます。ひまわりだけでなく、空と海が一望できる絶景写真。
銅賞
撮影者: 茂野 孝志 十日町市
題名 : 冬雀
講評 : 積雪の中では、カラー写真もモノクロの世界。枯れたひまわりの種を食べようと集まった雀なのでしょう。みんな丸々としていて、ても可愛らしい。癒される写真です。
銅賞
撮影者: 清水 陽一 妙高市
題名 : 花飾り
講評 : なんて可愛いのでしょう。小さい生き物のなせる技。散らばって咲いているピンクの花が控えめで、主役は雨露を飾った蜘蛛の巣です。背景のボケ具合と彩度も絶妙ですね。
銅賞
撮影者: 樋口 静子 新潟市南区
題名 : 厳冬
講評 : フリーズしている雪景色を見下ろし、流れを感じる川に目がいくと思いきや。手前の雪崩あとや氷柱などの自然の厳しさの中で、頭を垂れて耐えている木々の美しさを撮られています。