<総評> 写真家審査員 清水哲朗

応募数は年々減っていますが、自由・ネイチャー両部門で質の高い作品が集まりました。特に写真表現で重要な「視点」に個性的なものが多く、ハッとさせられたり、ドキッとしたり、へぇ〜と唸ったりしながら、じっくりと審査を行いました。昨年の総評でも会員の皆さんの作家性が強まっているとお伝えしましたが、現場で被写体と真摯に向き合い、持っている技術を駆使し、作品に落とし込む、表現者としての理想的な流れができているのを今回も大いに実感。目の前にある被写体に撮らされるのではなく一旦受け止めてから自分なりの解釈でアプローチできるのはプロでも難しいこと。それを多くの方が平然とやりのけるFPC新潟フジカラーフォト倶楽部会員の実力や恐るべしです。
ただ、自由部門は祭りやイベントなどの「ハレの日」やお子さん・お孫さんがとにかく多く、もっと幅広い内容で見たかったのが正直なところです。ネイチャー部門も既視感あるアプローチだったり、人気撮影スポットでのイメージ被り、会員同士一緒に撮影行った作品はどちらか一方しか選べない心理が働くなどレベルが高い作品でも泣く泣く選外にした作品もありました。
プリントクオリティは相変わらず高く安心して作者の表現世界に入ることができました。本コンテストに限らず、プリント応募の場合、審査員は内容とともに最終着地点の仕上がりも含めて作品評価をしていますので、今後も上質なプリントでの応募を続けてください。作品タイトルは今回も説明的なものが多く改善の余地はありそうですが、被写体との向き合い方に作家性が強く出ているぶん、時間とともに変化すると信じています。
毎回書いていますが、皆さんの作品の多く(選外も含めて)はカメラ誌や全国レベルのコンテストにおいても十分高く評価されるレベルです。新潟県内はもちろん、その実力を全国へ向けて発信、挑戦していただけたら幸いです。
最後になりましたが、FPC新潟フジカラーフォト倶楽部さまのご発展と会員の皆さまのご健勝を心よりお祈り申し上げます。

グランプリ

グランプリ

撮影者: 穂苅環

題名 : 「相棒」

講評 : 演者の凄みに緊張が走ります。写真を見ている側にも伝わるぐらいですから現場の空気は相当だったのでしょう。しかし、作者は動じず、しっかりと対峙。周囲の空間を大胆に省く構図と絶妙な光の捉えかたで演者と人形を浮かびあげています。結果、両者の表情を自然と対比する画面構成となり、互いの魂が乗り移っているような相似性に圧倒されてしまいます。演者と人形、どちらから見ても取れるタイトルも想像力をかき立てました。

自由部門

金賞

撮影者: 上野正道

題名 : 「横若のお玉ちゃん」

講評 : 撮影距離、シャッタータイミング、周囲の取り入れかたとあたかもそこにいると錯覚する臨場感に唸りました。近距離から広角レンズで撮影しているにも関わらず、空気の如く、誰も作者を意識していない不思議。カメラを意識させないのはスナップ撮影の理想です。

銀賞

撮影者: 手島岱月

題名 : 「不動講荒行」

講評 : 行者の雄叫びが聞こえてきそうです。ややもすると行者と炎の迫力、熱さに身を引きそうですが、ジッと耐え、メラメラの炎と焼け落ちる灰も含めて最高のシャッタータイミングでとらえています。主題を中心に背景の観客の様子まで収めた構図も無駄なく見事です。

銅賞

撮影者: 西山雅之

題名 : 「眼光」

講評 : 人間の眼は輝度差を脳内でコントロールしているため陰影はつきません。しかし、写真は光と影の芸術と言われる通り、輝度差をメリハリつけて表現できます。写真的視点で生まれたのが本作。よくある被写体も切り取りと露出選択で作品化できることを証明してくれました。

優秀賞

撮影者: 塚原幸子

題名 : 「怖くないもん」

講評 : 必死さが伝わってきます。この恐怖を乗り越えることで少年には大きな自信となり強くなるのでしょう。展示を考えると足元ギリギリよりも余裕のあるフレーミングが理想です。

優秀賞

撮影者: 黒坂芙美子

題名 : 「ふるさと」

講評 : 素敵な場所ですね。この時間帯に見た光景は生涯忘れられない記憶となりそうです。惜しいのは人物のポジション。横位置で撮るには左半分に多くのものが集まりすぎました。

優秀賞

撮影者: 菊地和好

題名 : 「大寒祈念」

講評 : 眉間の皺、真っ赤な指先と鼻、すぼめる口から寒さへの耐えが伝わってきます。滝行は人気の被写体で既視感があるためこの角度なら部分的に切り取ると想像力がより働きます。

優秀賞

撮影者: 上杉正春

題名 : 「駆け上がり」

講評 : 近距離から迫り来る馬を撮るのは至難の業。作者の度胸に敬意を払いますが当人は意外と冷静にシャッターを切っています。ただ祭りの全容を知らない者にはもう少し情報が欲しいです。

優秀賞

撮影者: 三澤京子

題名 : 「幸せジャンピング」

講評 : インパクトあふれる作品です。斜め構図、晴れ着でジャンプもさることながら首より上のないフレーミングにドキッとさせられました。意外性はスナップ写真の可能性を広げます。

自由部門入選


入選撮影者:荒井 一郎

題名 :届いて


入選撮影者:是永 進

題名 :霧降る湖面


入選撮影者:小山 覚

題名 :孫娘


入選撮影者:渋木 高志

題名 :三人模様


入選撮影者:田代 孝

題名 :こんにちは


入選撮影者:田中日登志

題名 :課外授業


入選撮影者:田辺佳代子

題名 :現場最前線


入選撮影者:山中 巌

題名 :春のひとこま


入選撮影者:吉澤 園恵

題名 :大物ゲット


入選撮影者:渡辺 隆

題名 :ひまわりっ子

ネイチャー部門

金賞

撮影者: 金子範夫

題名 : 「岩稜を見上げて」

講評 : 星空の美しさはもちろんですが、地表風景で印象が変わるのが星景写真。見慣れない岩壁は採石場のようですが、岩肌も見せつつ、視線の先に浮かぶ三日月に心をギュッと鷲掴みにされました。2年前にも星景写真で金賞を受賞した作者の実力は本物です。

銀賞

撮影者: 立川政義

題名 : 「早春の陽だまり」

講評 : うっとりと吸い込まれるような幻想世界。水芭蕉の群落、ガス、残雪。そこに眩い太陽光が射し込み、息を呑むような世界が生まれました。向かい合う水芭蕉同士が会話をしているようであり、ダンスパーティーのようであり、春を迎えた大自然の喜びを感じました。

銅賞

撮影者: 青木茂男

題名 : 「夏のベイビー」

講評 : 赤ちゃん=かわいさで狙う写真は数あれど、これから降りかかるであろう困難や苦難、自然界で生き抜く決意を感じる子猿のポートレートはなかなかお目にかかりません。暗い背景ではなく明るいライトグリーンを選んだことで余計に心に響きました。

優秀賞

撮影者: 小林俊行

題名 : 「小さい秋」

講評 : 蜂の巣状の花托に溜まった水に映り込む景色の意外性に惹き込まれました。集合体はそれだけで圧倒されるので、花托の輪郭を見せずに切り取るとより想像力が膨らむでしょう。

優秀賞

撮影者: 鴨井孝夫

題名 : 「水面に咲く」

講評 : 花筏に浮かぶ木の影とひとひらの赤い花弁。斜め構図で画面一杯に狙うところがスナップ的で作者の心情がよく表れています。構図バランスが良いとさらに高評価でした。

優秀賞

撮影者: 山本勝栄

題名 : 「有終の美」

講評 : 暗く仕上げることで光が当たる部分だけが強調され、宇宙空間のような独特の世界が広がっています。作品性は評価できますが、言い切るタイトルは想像を断ち切る怖さがあります。

優秀賞

撮影者: 斎藤日出子

題名 : 「春溪」

講評 : 雪解けで増水する川とひっそりと咲く桜の対比に感情を揺さぶられます。暗めの露出選択も春の嵐を連想させますが、桜をメインにするなら下半分の構図でも良いでしょう。

優秀賞

撮影者: 斎藤達彦

題名 : 「乙和池」

講評 : 伝説もある池だけにシトシトと降る雨を見ると独特の情感が湧き起こり、物思いにふけってしまいますね。構図はノハナショウブ中心に組み立てるとより視点が定まります。

ネイチャー部門入選


入選撮影者:大澤 昭広
題名 :初夏に舞う


入選撮影者:堅田 征子
題名 :120年に咲く花(キンメイチク)


入選撮影者:小湊 正光
題名 :桜


入選撮影者:柴田 民男
題名 :真夜中のドラマ


入選撮影者:梨本 清一
題名 :畦道夕照


入選撮影者:西 一郎
題名 :霧の朝


入選撮影者:羽田 寿弘
題名 :命の連鎖


入選撮影者:長谷川 隆
題名 :越後の朝焼け


入選撮影者:松平 攻
題名 :花模様


入選撮影者:渡辺 昭子
題名 :散歩